第3回かわさきコンパクトセミナー&交流会報告(2010年11月10日)
連続セミナー&交流会の最終回は「NPOと組んで企業力UP! ~ソリューションの理論、ノウハウ、実例~」と題して、横浜市立大学教授であり同大学CSRセンターLLPセンター長の影山 摩子弥氏から1時間ほどの講義を受け、その後交流会を行いました。
【セミナー要旨】
感性がキーとなっている低成長時代
現代は景気低迷が続き、大きな増収が見込める時代ではない。すなわち、高度成長期の1950年代~70年代は、キャッチアップ型で米国に追いつけ追い越せとばかりに日本的経営で一丸となり、成長率が10%を越えさえしたが、今やマイナス成長を示している。その結果、1,000万円以上の負債を抱えた倒産は09年度で15,000件、失業率は5%を越えた。
なぜ景気低迷が続くのか。モノの値段が安いことは短期的にみると消費生活にプラスになり、またビジネスチャンスとばかりに安売りする企業が現れるが、安売りが困難な中小企業は圧迫され倒産し失業が増え消費が冷え込む。まさに経済学者ケインズが提唱した「合成の誤謬(ごびゅう)」だ。一人ひとりの目先のメリットの追求が、社会全体としては、景気の悪化を招いている。
この低成長時代を背景に、社会は質を高めることを志向する「内包化」に向かっている。この時代を捉える大きな要素としてサービス経済化と高度消費社会化の2つを挙げることができる。
現代はサービス経済化が進み、第3次産業がGDPの7割を占める。サービスは人と人との直接の関係で生み出され消費される。人間は理性と感性の生き物であるが、サービスはその感性に働きかけるなど、感性の作動に依拠する非物質的財貨である。それに加え、高度消費社会においてはモノが溢れ豊かになり、人々はありきたりなものでは満足せず、欲求が高度化する。その結果、買回り品は低廉なものを求める一方で、趣味の品やブランド品などには支出をいとわず、高付加価値化、セグメント化(分割化)が進む。消費は高度化した感性が展開する場となる。しかし、それは消費の領域だけではない。仕事においても、自己の生き方や思いなど、感性的契機の比重が大きくなっている。感性は仕事に対する社員のモチベーションや企業に対するエンゲージメント(求心力)に関わるため、感性が重要なキイポイントとなっている現代社会において、感性に働きかけなければ、従業員のやる気を引き出せなくなっている。
企業とNPOの戦略で社会の再構築
現在、日本や欧米が抱えている問題は、第2次産業や生産の領域に比重があり、景気浮揚策としての公共事業が有効だった時代から、サービス経済化や高度消費社会化を背景とする内包化の時代に社会が変わったことに対応できていないことに起因する。社会の構成要素が変わった今、変化に合わせて全体のシステムを組みかえるような経済政策、社会政策が必要なのだ。この点では、感性への対応というあらたな課題がでてきているなかで、感性を汲み取ったり、感性に訴えたりする取組みがCSRであり、NPOである。同時代にNPOとCSRが登場して連携を模索しているのは、それが時代の要請であり、同時代を共有する企業とNPOを「つなげる」ことで、社会の再構築が進むことを示唆している。
つまり、社会は複数の要素がつながり合ってシステムを構築している。小さな歯車が緻密に構成されて動く時計のようなものだ。小さな歯車が少しずつ変われば全体のシステムが変わるように、小さくても多くのNPOが少しずつ周りを変え、つながりを再構築することで社会全体が変わりうる。
では、どのような連携が考えられるか。社会貢献が企業利益につながる例は既にあるが、成功事例をまねても成功はしない。工夫した点、苦労した点などに独自のノウハウがある。たとえば、社会貢献活動によって経営上の意味(顧客の評価、従業員のやる気、それによる収益性の改善など)を確保するためは、社会的に意義のある活動に、ステークホルダーが納得するストーリーの下で取組み、ステークホルダーの感性に訴えることが必要で、成功している企業はNPOと連携して取組みを進めている。
つまり、効果的なCSRのためには、CSRコミュニケーションやCSRダイアログなどのようにステークホルダーを集めフリーディスカッションをしてニーズを読みとる必要がある。そしてニーズに応えた取組みを行い、それを伝え、ステークホルダーの心に働きかけることが重要となるが、消費者を把握しきれていない企業は多い。そこで、感性や心を把握して活動している組織、社会と密接につながっている組織、社会の情報を握っている組織、つまりNPOと連携する必要が生ずる。そのような連携は、NPOにとっては寄付などで活動資金を得ることができることに加え、賛同者の拡大やその後の活動を広げる可能性などメリットは大きい。
NPOが企業と連携するには、まず企業が欲していることは何かを考える必要がある。そして連携後は、その企業に活動内容や成果をきちんと報告する。その際、企業がステークホルダーへの説明責任を果たすことができるようなデータを作ることが必要だ。
NPOと組む企業の事例
<商品開発>
・大川印刷:NPO法人ETICからの大学生長期インターンに商品開発を任せる。料理の成分表示ピクトグラム(概念を図で表すもの)を開発しAPECの食堂で使用された。
・チョコレートデザイン会社:同じくインターン生に商品開発から販売まで任せたところ、ネットなどで評判になり販売促進につながった。
・麒麟麦酒株式会社:飲酒運転撲滅運動団体などにヒアリングしてノンアルコールビール開発につなげた。
<従業員の求心力UP>
・HSBC:社員を社会貢献活動に参加させて求心力を高めた。
<顧客開拓>
・全国子育てタクシー協会:子育て関連NPOを組んで、クライアントの紹介とコーディネートを依頼し、顧客獲得につなげた。
<専門コンサル>
・産業クラスター研究会、ヨコハマみらい環境協議会:プロボノ。企業人がNPOに関わり活動推進に役立てる。
<社会貢献効果UP>
・横浜サンタプロジェクト:サンタの格好をして福祉施設にプレゼントを配布するなど、街の一大イベントに発展している。マツダ、ペプシコーラなど多数の企業が関わり、物や場所を提供している。NPO法人アクションポート横浜が事務局となって実行委員会形式で運営。
【交流会】
かわさきコンパクトの交流会がきっかけでコラボレーションが始まった「おと絵がたり」と「日本理化学工業株式会社」の話題提供のあと、参加者どうしの情報交換を行いました。
おと絵がたり(加藤妙子さん)
交流会で日本理化学(株)からキッドパス(平滑面に書いて消せるカラーダストレスチョーク)の話を聞き、ワークショップでの利用を思いついた。夏の体験講座にキッドパスを使ったら子どもたちに好評で、1月に行う大きな公演で使いたいと企画している。他にも、影絵の演目に「ブレーメンの音楽隊」がある縁でモトスミ・ブレーメン通り商店街振興組合の出張商店街の事業の一環として高齢者施設での上映も実現した(同振興組合はかわさきコンパクトの参加企業)。また福祉作業所のお菓子工房でモトスミ・ブレーメン通り商店街のお菓子を作り、商店街で販売する企画も進んでいる。デザインはおと絵がたりが手掛ける。交流会がきっかけで人のつながりができて活動が広がったことを実感できた。
日本理化学工業株式会社(大山真里さん)
窓ガラスにも書ける新商品(キッドパス)の販路を学校以外の一般へ拡大しようという課題を抱えているところに交流会でおと絵がたりと出会えた。1月の公演でOHPシートに参加者に描いてもらい上演したいという申し出に賛同し協賛することになった。影絵を見るだけでなく参加者も描ける所に興味を持った。会社としてもユーザーと直接関わり、新しい使い方を発見できたことがよかったと思う。このような経験を通して多様な使い方を積み重ねて販路拡大につなげたいと考えている。
その後、他の参加者から活動紹介やPRがありました。最後に講師から「早くから企業と市民の連携を進めている川崎市にはさらに先行事例を積み上げていって欲しい。企業が抱えている課題に対してNPO側が解決策を考えプレゼンテーションを行い、実際の協働にもっていくことが考えられる。皆さんには一歩踏み出して事例を作っていただきたい。」というエールがありました。
会終了後には、あちらこちらで名刺交換をする姿が見受けられ、アンケートからは、「団体、企業との連携を拡げるにあたって、どのようなポイントが課題となるか勉強になった」「期待していたNPOとのコラボレーションとのお話が聞けて良かった」などの感想が寄せられました。
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